現在の学力と医学部志望校の受験に必要な学力の差を埋めるという効率的な受験勉強をしましょう。
医学部の受験をするならば、医学部予備校を探すよりも勉強を始めるよりも前に、現在の自分の学力レベルを知ることが大事です。
第31回は、現在のレベルを知り、受験に向けてどのように取り組んでいったら良いのかを医学部受験の神様、和田秀樹先生にお話いただきました。
第31章.スタートレベルを知る
さて、これまで、志望校を早めに決めて、その大学の合格最低点をクリアすることを目標にして、志望校に特化した対策をやれば、受験は圧倒的に有利だという話を続けてきた。
基本的に、受験勉強というのは、現在の学力と志望校の合格者の最低点とのギャップを高校3年生や浪人生なら、あと、9~10ヶ月で、高2生ならあと2年足らずで、埋める勉強をするということである。
ということは、志望校を決め、その合格者の最低点を知ることで、ゴールがわかったとしても、もとの学力がきちんと把握できていなければ、この1年間、何を勉強すればいいのかがわからないということになる。
浪人生や、ある程度、仕上がりのいい高3生であれば、現状の学力を測るいちばんいいツールは実は志望校の過去問である。
たとえば、400点満点で、例年の合格者の最低点が280点というような学校を受ける場合、今、過去問をやってみて、220点くらい取れるというのであれば、この1年間で、あと60点(用心のために80点くらいは欲しいが)伸ばせばいいことになる。
英語は一応、合格ラインに乗っているとかいう話であれば、合格ラインに乗っていない科目を重点的にやるほうが賢明だ。
浪人生の場合、何を伸ばせばいいのかがはっきりしているのに、予備校の授業をすべて受けて、みんなに合わせて勉強するというのは、いかにももったいない話である。
この1年間で、志望校に出そうなところを伸ばせるだけ伸ばしていけば、合格の可能性は高い。これは比較的できのいい高3生でも同じことである。
問題は、今のできがとても医学部レベルでないとか、高校1年生や2年生で、学校の勉強も危ないというケースである。
こういう場合、多くは、受験勉強に入る基礎学力(第6~7回参照のこと)が足りていない。
英語や数学の基礎学力や、日本語の読解力が十分でない場合、勉強していても理解が困難で、やっている割にできないということが起こりやすい。
医学部受験の多浪生というのも多くは、この手の基礎学力不足のために、それなりに志望校対策を予備校がやってくれていても、成績が伸びないケースが多いし、一般の受験生にしても、それなりに問題集や参考書を選び、きちんとやっていても、伸びないという結果に陥りやすい。
スタートレベルの把握こそが受験の成否を決めると言っても過言でない。
スタートレベルの把握の対策は、第8回を参照してほしい。
和田秀樹
1960年生まれ。東京大学医学部卒業後、現在国際医療福祉大学院教授を含め川崎幸病院精神科顧問や一橋大学経済学部非常勤講師、和田秀樹こころと体のクリニック院長など幅広く活躍中。
書籍では「受験は要領」がベストセラーとなり、医学部合格セミナーを全国で展開し「和田メソッド」を提唱、医学部受験の神様と呼ばれている。また、自身では和田塾緑鐡舎塾長も務め毎年無名校から多くの合格者を輩出している。
- 第1章.過去問を有効に活用する
- 第2章.過去問を使って、どの科目に重点をおくかを考える
- 第3章.過去問を使って、その学校に的を絞った対策を行う
- 第4章.過去問を使って、志望校を決める
- 第5章.医学部受験の共通学力とは
- 第6章.医学部受験のための絶対基礎学力とは
- 第7章.絶対基礎学力としての読解力
- 第8章.意外にわからない絶対基礎学力の不足
- 第9章.受験直前に伸びる受験学力
- 第10章.本番戦術が合否を決める
- 第11章.信じるものが救われる本番に向かう精神力
- 第12章.意外に難しいケアレスミス対策
- 第13章.ミスらん力で合格を勝ち取る
- 第14章.センター本番で最善の力を出すには
- 第15章.センター本番で最善の力を出すには(その2)
- 第16章.センター試験が終わった時点で、本格的な受験生になる
- 第17章.個別性に注目して、最後の逆転にかける
- 第18章.過去問の最終利用法(※編集中)
- 第19章.受験当日の生活術
- 第20章.受験のスタート術
- 第21章.受験生と高校生の違いとは?
- 第22章.記憶力をどう高めるか?(※編集中)
- 第23章.ベストの睡眠時間は?
- 第24章.食事の意味
- 第25章.時間の家計簿をつける
- 第26章.休息の意味
- 第27章.和田式受験勉強法とは
- 第28章.まず志望校を選ぶ
- 第29章.志望校の選び方
- 第30章.私立専願という選択肢
- 第31章.スタートレベルを知る
- 第32章.現実的な受験計画を立てる
- 第33章.受験計画が具体的なものにならない人のために
- 第34章.一日、一週間、一カ月の計画をどう立てるか?
- 第35章.受験勉強の暗記と思考のバランス
- 第36章.和田式暗記数学とは
- 第37章.和田式暗記数学とは(その2)
- 第38章.和田式医学部受験英語攻略法
- 第39章.医学部受験対策にこそ和田式受験英語勉強法
- 第40章.医学部受験と英作文
- 第41章.自由英作文という難敵
- 第42章.医学部国語対策の基本戦術
- 第43章.医学部理科対策の基本戦術
- 第44章.過去問から逆算する医学部理科対策
- 第45章.単科の医学部は、とくに過去問対策が重要
- 第46章.単科の医学部の生物対策
- 第47章.医学部入試面接は落とすためのもの
- 第48章.どんな受験生が面接で落とされるのか?
- 第49章.医学への興味や関心を示す
- 第50章.医学小論文対策の基本
- 第51章.小論文そのものの対策の基本
- 第52章.小論文の最大のトレーニングは添削
- 第53章.模試をどう利用するか
- 第54章.模試によって次回以降の戦術を立てる
- 第55章.模試の成績を気にしすぎない
- 第56章.最高の模試は、自分の志望校の入試問題だ
- 第57章.あと何点取れれば受かるという発想をもつ
- 第58章.改めて志望校を決める
- 第59章.主要科目の見切り時
- 第60章.浪人のための得点術
- 第61章.朝の5分の計算の意味
- 第62章.直前期に脳の働きを高める
- 第63章.直前期に思い切り勉強する
- 第64章.直前期の生活術
- 第65章.直前期の休み方
- 第66章.センター直前はシミュレーションが明暗をきめる
- 第67章.ミスの事前対策を行う
- 第68章.これからが本格的な受験生になる
- 第69章.高2生もこれからが本格的な受験生になる
- 第70章.受験直前でもまだ伸びる
- 第71章.受験本番に強くなる法(その1)
- 第72章.受験本番に強くなる法(その2)
- 第73章.受験本番が終わったら
- 第74章.受験がうまくいかなかったら
- 第75章.2020年入試改革の傾向と対策(その1)
- 第76章.2020年入試改革の傾向と対策(その2)
- 第77章.2020年入試改革の傾向と対策(その3)
- 第78章.2020年入試改革の傾向と対策(その4)