当日力を発揮するための体の準備

医学部予備校に長い間通い勉強してきたとしても重要なのは本番。しかし、もし前日、眠れなければ、当日に力を発揮できないこともあるでしょう。

『医学部合格への道』第19回目は、医学部受験の神様、和田秀樹先生に、受験当日のコンディション作りについてお話をしていただきました。

第19章．受験当日の生活術

以前、受験当日の精神力をどうつけていくかという話をした。

現実に、医学部受験の場合は、どうしてもその大学という受験生が比較的少ないので、勉強しているうちに学力レベルが上がると志望校をそれに合わせるし、下がったら、自分の学力でも行きやすい学校に志望校を下げることが多いので、同じ学校を受ける受験生のレベルが均質化しやすい。

すると、当日にパニックになったとか、ミスをしたという受験生が残念な結果になるし、逆にそれがなければ合格ということが現実には多い。

これについては、以前のコラムをもう一度読み返してほしい（１１～１３回）が、 今回は、試験当日のコンディション作りのための生活術について書いてみたい。

受験生がいちばん心配するのは、前日の夜に眠れないということだろう。

精神科医を長くやっていて、実感するのは、この手のことは本当にメンタルの影響が大きいということだ。

眠れないことを気にすると眠れなくなるし、眠れなくてもいいやと開き直ると意外に眠れる。

なかなか開き直れない人に伝えておきたいのは、体を横にして休めるだけで、眠れなくても（実はその間に脳が眠っていることは多い）脳は休息が取れるし、翌朝の試験では十分に通用するということだ。

逆に眠れないと思って、少しでも勉強して翌日に備えようとするのは、とくに机に向かうなどの姿勢でやるなら逆効果だ。とにかく眠れなくても、１２時くらいまでにはベッドで横になってほしい。

また、部屋を少し暖かくするだけで、眠りに入りやすくなることは珍しくない。

むしろ重要なのは前日の昼間の使い方だ。日光に当たるとメラトニンという脳内睡眠ホルモンの分泌がよくなることはわかっている。忙しい直前期であっても、試験前日は３０分程度の散歩が有効だ。

どうしてもという場合は、医者に睡眠剤を出してもらったり、市販の睡眠剤の頼る手もある。おそらく飲んだことのない人にはびっくりするくらいよく眠れるだろう。

ただ、効き方に個人差があるので、それを使いたいと思う場合は、試験前夜の前にいちど試しておいたほうがいい。人によっては、翌朝にひどく残って、試験にかえって不利になる。

事前にそれがわかっていたら、それをやめるなり、半分の量にするなりの対処ができる。

前日の晩にちゃんと眠れるだけで、当日の精神的な余裕も違ってくるだろう。ちょっとした工夫で眠れると信じてほしい。