医学部では国公立・私立で推薦入試が増加しており、高校生を中心に多くの受験生が合格を目指して対策しています。
国公立・私立大学の医学部は、一般入試だけでなく推薦入試も実施する大学が数多くあります。
推薦入試は原則として専願となりますが、一般入試(前期・後期)との併願は可能なため、医学部の受験機会を増やすことが可能です。
この記事では、推薦入試の種類や一般入試との違いについて解説するとともに、医学部医学科で推薦入試を実施する全国の国公立・私立大学を一覧でご紹介します。
医学部を志望する受験生は必見の内容となっていますので、ぜひ参考になさってください。
推薦入試の種類
医学部の推薦入試は、主に「学校推薦型選抜」と「総合型選抜(旧AO入試)」の2種類に区別できます。それぞれどのような特徴があるのでしょうか。
学校推薦型選抜
学校推薦型選抜とは、出身高校長の推薦がなければ出願できない選抜方式です。
また、一般的に「推薦入試」といえば「学校推薦型選抜」を指します。
出願にあたっては各大学によって「成績評価4.3以上」「A評価以上」といった成績基準が設けられており、基準を超えていなければ出願できません。
医学部の場合、国公立大学は「4.0〜4.7」、私立大学は「3.5〜4.3」が基準の目安となり、高校3年間の内申点が重視されます。
学校推薦型選抜は、さらに以下の3つに分けられます。
指定校推薦
指定校推薦とは、各大学が指定する高校出身者のみが出願できる選抜方式です。
推薦人数を超える希望者がいた場合は学内で選抜する必要があります。
指定校推薦の合格率は高く、合格した生徒は必ずその医学部に入学しなければなりません。
公募推薦
公募推薦とは、各大学の出願条件を満たし、出身高校長の推薦があれば誰でも受験できる選抜方式です。
他の選抜方式と比べ募集定員は多めであり、原則として合格した場合はその医学部に入学することが条件となります。
地域枠推薦
地域枠推薦とは、各大学が指定する地域条件を満たした者のみが出願できる選抜方式です。
地元出身者だけでなく、近隣の地域であれば県外出身者でも出願できる大学もあります。
医学部の場合、合格すれば修学資金が貸与され、卒業後は指定された医療機関で一定期間は医師として勤務することが条件となります。
総合型選抜(旧AO入試)
総合型選抜(旧AO入試)とは、各大学が定める「アドミッションポリシー(入学者受け入れ方針)」に基づき、受験生の人間性や学習意欲を重視する選抜方式です。
総合型選抜は大学独自の基準で選抜が行われるため、医学部では面接や小論文以外にも特殊な選抜方法(ワークショップなど)が実施される場合があります。
また、医学部の総合型選抜では共通テストや学科試験を取り入れる大学も多いため、ある程度の学力は必要です。
推薦入試は一般に比べて合格しやすい?
一般入試と比べ医学部の推薦入試は学力の比重が低くなるため、推薦入試の方が合格しやすいのではないかと考える受験生もいるでしょう。
しかし、あくまで学力重視の一般入試と比較すれば比重が低くなるだけであり、医学部の推薦入試では一定程度の学力も必要となります。
医学部は推薦入試も共通テスト(旧センター試験)を利用する大学が多い
医学部の推薦入試は、共通テスト(旧センター試験)を利用する国公立大学がほとんどです。
しかし、共通テストの成績を最終的な合否に影響させるかどうかは大学によって異なります。
「共通テストの成績○%以上」といった基準をクリアした受験生のみが試験を受けられるようにするなど、受験対象者の選抜のみに利用し、最終的な合否判定には利用しないパターンもあります。
共通テストを利用する医学部例(神戸大学)
神戸大学医学部では、総合型選抜で共通テストが利用されます。
神戸大学の場合、医学部医学科の出願者数が募集人員の約2倍を上回れば、共通テストの成績(5教科7科目)によって第1次選抜が行われます。
第1次選抜に合格しなければ、最終選抜の面接・口述試験に進むことはできません。
また、神戸大学医学部の最終的な合否は、共通テストの成績も含めて総合的に判定されます。
共通テストを利用しない医学部例(群馬大学)
群馬大学医学部では学校推薦型選抜を実施していますが、医学部医学科の選抜過程で共通テストの成績は利用していません。
群馬大学医学部の合否は、面接・小論文・出願書類から総合的に判定されます。
推薦入試の種類によっても異なる
推薦入試にはいくつかの種類があり、その種類によっても合格のしやすさは異なります。
たとえば、各大学が指定する指定校推薦の場合、学内選抜を通過すればほぼ合格に手が届くと考えられます(合格が確約されるわけではありません)。
ただし、指定校推薦は私立大学での実施がほとんどなため、国公立大学を志望する受験生にはあまり関係ないでしょう。
一方、大学独自の基準で選抜が行われる総合型選抜では、面接や小論文だけでなく、筆記試験やケーススタディ、共通テストの成績で選抜する大学もあります。
推薦入試とはいえ医学部では学力も重視されるため、「推薦入試は合格しやすい」と一概にはいえないのです。
推薦入試が不合格でも一般入試で再チャレンジ可能
医学部の推薦入試では、合格した場合は入学することを前提としています(専願制)。
同じ大学であれば併願を認める国公立大学、他大学との併願を認める私立大学も一部ありますが、原則として併願は認められていません。
ただし、推薦入試と一般入試の併願は可能です。推薦入試の方が試験日程が早く、不合格の場合は一般入試で再チャレンジできます。
医学部の受験機会が増やせるため、志望大学の推薦入試要項を満たしていれば出願することをおすすめします。
国立大学医学部の入試情報【2021年度】
国立大学医学部の2021年度推薦入試情報を一覧にまとめました。
医学部を設置する国立大学のほとんどが推薦入試を実施し、医学を学ぶ志のある受験生を募集しています。
なお、医学部の推薦入試は区分や募集定員に変更が生じることがあります。
最新の入試情報は必ず各大学の募集要項をご確認ください。
大学名 | 区分 | 募集定員 (医学部) |
---|---|---|
旭川医科 大学 |
国際医療人 特別選抜 |
5名 |
道北・道東 特別選抜 |
10名 | |
北海道 特別選抜 |
32名 | |
北海道 大学 |
総合型選抜 | 5名 |
弘前大学 | 青森県内枠 | 27名 |
北海道・東北枠 | 20名 | |
東北大学 | AO入試Ⅱ期 | 15名 |
AO入試Ⅲ期 | 12名 | |
特別選抜 入学試験 |
宮城県地域枠:7名、 岩手県地域枠:2名 |
|
秋田大学 | 一般枠 | 20名 |
地域枠 | 29名 | |
山形大学 | 一般枠 | 25名 |
筑波大学 | 一般枠 | 44名 |
茨城県内枠 | 18名 | |
群馬大学 | 一般枠 | 25名 |
地域医療枠 | 12名 | |
東京大学 | 推薦入試 | 3名程度 |
東京医科 歯科大学 |
地域特別推薦(茨城県枠) | 2名以内 |
地域特別推薦(長野県枠) | 2名以内 | |
特別選抜I | 5名 | |
新潟大学 | 特別選抜 | 42名 |
富山大学 | 地域枠 | 15名以内 |
富山県特別枠 | 10名 | |
金沢大学 | 一般枠 | 15名 |
石川県特別枠 | 10名 | |
富山県特別枠 | 2名 | |
福井大学 | 全国枠 | 合計30名 (地域枠・健康推進枠含む) |
地域枠 | 10名程度 | |
福井県 健康推進枠 |
10名程度 | |
山梨大学 | 地域枠 | 35名以内 |
信州大学 | 地元出身者枠 | 10名 |
地域枠 | 15名 | |
岐阜大学 | 一般枠 | 20名 |
地域枠 | 28名 | |
浜松 医科大学 |
一般枠 | 21名 |
地域医療枠 | 4名 | |
名古屋 大学 |
一般枠 | 12名 |
三重大学 | 一般枠 | 合計40名 (地域枠AB含む) |
地域枠A | 25名程度 | |
地域枠B | 5名程度 | |
滋賀 医科大学 |
一般枠 | 29名 (うち県内出身者15名) |
地元医療枠 | 6名 | |
京都大学 | 特色入試 | 5名 |
大阪大学 | 学校推薦型選抜 | 5名程度 |
神戸大学 | 地域特別枠 | 10名 |
総合型選抜 | 10名 | |
鳥取大学 | 一般枠 | 15名 |
地域枠 | 5名 | |
特別養成枠 | 5名 | |
島根大学 | 一般枠 | 25名以内 |
地域枠 | 10名以内 | |
緊急医師 確保対策枠 |
9名以内 (うち県内出身者5名以内) |
|
岡山大学 | 地域枠 (岡山県) |
4名 |
地域枠 (鳥取県) |
1名 | |
地域枠 (広島県) |
2名 | |
地域枠 (兵庫県) |
2名 | |
広島大学 | 総合型選抜 | 5名 |
学校推薦型選抜 (ふるさと枠) |
18名 | |
山口大学 | 全国枠 | 5名 |
地域枠 | 22名以内 | |
緊急医師 確保対策枠 |
5名以内 | |
地域医療 再生枠 |
10名以内 | |
徳島大学 | 一般枠 | 25名 |
地域枠 | 17名 | |
四国4県 定着研究医型 |
8名 | |
香川大学 | 一般枠 | 12名程度 |
地域枠 | 13名程度 | |
県民医療 推進枠 |
5名 | |
愛媛大学 | 推薦A (学校推薦) |
25名 |
推薦B (地域特別枠) |
20名 | |
総合型選抜 | 10名 | |
高知大学 | 四国・瀬戸内地域枠 | 20名以内 |
総合型選抜 | 30名以内 | |
佐賀大学 | 一般枠 | 20名 |
佐賀県枠 | 18名 | |
長崎県枠 | 1名 | |
佐賀県 推薦入学 |
4名 | |
長崎大学 | 推薦A (地域医療枠) |
15名 |
推薦B (地域医療特別枠) |
15名 | |
推薦C (佐賀県枠・宮崎県枠) |
各2名 | |
推薦D (グローバルヘルス 研究医枠) |
10名 | |
熊本大学 | 一般枠 | 15名 |
地域枠 | 5名 | |
大分大学 | 一般枠 | 22名 |
地域枠 | 13名 | |
宮崎大学 | 一般枠 | 15名 |
地域枠 | 10名 | |
地域特別枠 | 15名 | |
鹿児島 大学 |
地域枠 | 18名 |
琉球大学 | 地域枠 | 14名程度 |
離島・北部枠 | 3名程度 |
公立大学医学部の入試情報【2021年度】
公立大学医学部の2021年度推薦入試情報を一覧にまとめました。
医学部の推薦入試は区分や募集定員に変更が生じることがあります。
最新の入試情報は必ず各大学の募集要項をご確認ください。
大学名 | 区分 | 募集定員 (医学部) |
---|---|---|
札幌 医科大学 |
先進研修連携枠 | 20名 |
特別枠 | 15名 | |
福島県立 医科大学 |
A枠 (県内現役枠) |
25名程度 |
A枠 (県内既卒枠) |
10名程度 | |
B枠 (県外出身者枠) |
15名以内 | |
横浜 市立大学 |
地域医療枠 | 15名 (うち県内出身者10名) |
神奈川県指定診療科枠 | 3名 (うち県内出身者2名) |
|
名古屋 市立大学 |
地域枠 | 7名 |
中部圏活躍型 | 27名 | |
名古屋市 高大接続型 |
3名 | |
京都府立 医科大学 |
特別選抜 | 7名 |
大阪 市立大学 |
地域医療枠 | 10名 |
総合型選抜 | 5名 | |
奈良県立 医科大学 |
緊急医師確保特別枠 | 13名 |
地域枠 | 25名 | |
和歌山 県立 医科大学 |
一般枠 (県内出身者) |
6名程度 |
県民医療枠 (全国) |
5名程度 | |
地域医療枠 (県内出身者) |
10名 |
私立大学医学部の入試情報【2021年度】
私立大学医学部の2021年度推薦入試情報を一覧にまとめました。
医学部の推薦入試は区分や募集定員に変更が生じることがあります。
最新の入試情報は必ず各大学の募集要項をご確認ください。
大学名 | 区分 | 募集定員 (医学部) |
---|---|---|
岩手 医科大学 |
地域枠A (岩手県出身者) |
15名 |
地域枠B (東北出身者) |
8名 | |
秋田県地域枠 | 2名 | |
公募推薦 | 15名 | |
独協 医科大学 |
指定校推薦 | 20名 |
公募推薦 | 10名 | |
指定校推薦 (栃木県地域枠) |
5名以内 | |
総合型選抜 | 7名以内 | |
埼玉 医科大学 |
指定校推薦 | 5名 |
公募推薦 | 14名 | |
埼玉県地域枠 | 19名 | |
特別枠 | 2名 | |
東邦大学 | 総合型選抜 | 10名程度 |
同窓生子女 | 5名程度 | |
付属校推薦 | 25名程度 | |
日本 医科大学 |
総合型選抜 | 2名 |
帝京大学 | 公募推薦 | 10名 |
東海大学 | 総合型選抜 (希望の星育成) |
5名 |
東京 医科大学 |
一般枠 | 20名以内 |
茨城県 地域枠 |
8名以内 | |
山梨県 地域枠 |
2名以内 | |
東京女子 医科大学 |
一般枠 | 20名程度 |
推薦入試 (至誠と愛) |
7名程度 | |
指定校推薦 | – | |
杏林大学 | 総合型選抜 | 1名 |
日本大学 | 校友子女選抜 | 3名 |
北里大学 | 指定校推薦 | 35名 |
地域指定校 推薦 |
9名(山梨県:2名、 茨城県:2名、 神奈川県:5名) |
|
聖マリアンナ 医科大学 |
一般枠 | 10名程度 |
神奈川県 地域枠 |
5名 | |
指定校推薦 | – | |
金沢 医科大学 |
総合型選抜 | 20名 |
卒業生子女枠 | 7名 | |
指定校・ 指定地域枠 |
5名 | |
愛知 医科大学 |
公募推薦 | 20名程度 |
愛知県 地域枠 |
5名程度 | |
藤田 医科大学 |
ふじた未来入試(高3枠・高卒枠) | 合計15名 |
関西 医科大学 |
特別枠(専願) | 10名 |
地域枠 (専願) |
15名(大阪府:5名、 静岡県:8名、 新潟県:2名) |
|
一般枠 (併願) |
10名 | |
特色推薦 | 7名 | |
大阪 医科大学 |
推薦入試 (建学の精神) |
3名程度 |
近畿大学 | 一般枠 | 25名 |
兵庫 医科大学 |
一般枠 | 12名程度 |
地域指定校推薦 | 5名以内 | |
川崎 医科大学 |
総合型選抜 (中国・四国出身者枠) |
20名程度 |
附属 高等学校 推薦 |
30名程度 | |
福岡大学 | 一般枠 | 23名 |
地域枠 | 10名 | |
久留米 大学 |
一般枠 | 10名程度 |
地域枠 | 20名程度 | |
福岡県 特別枠 |
5名 | |
産業 医科大学 |
学校推薦型選抜 (Aブロック・ Bブロック・ Cブロック) |
合計20名以内 |
まとめ
医学部の推薦入試では、面接や小論文だけでなく、学科試験や共通テストの成績から総合的に判定する大学もあります。
一般入試と比べると学力の比重は低くなりますが、たとえ推薦入試であっても一定程度の学力がなければ医学部に合格することは難しいでしょう。
また、医学部の推薦入試は一般入試との併願が可能です。
併願する場合は推薦入試と一般入試の対策を同時に行うことになりますが、医学部の受験機会を増やしたい方は検討することをおすすめします。
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