医学部合格への道
試験の評価制度変更がもたらす影響とは(医学部合格への道/第76回)

入試改革による大きな変更点とは

『医学部合格への道』第76章.2020年入試改革の傾向と対策(その2)

新試験制度の注意点

新しく導入される試験の特徴について、試験の評価制度が変わるということは受験勉強の仕方、点の取り方も大きく変える必要がある。

今回は、多数の医学部受験生を合格に導いてきた和田秀樹先生に、注意すべき点と危惧している点について具体的に伺いました。

第76章.2020年入試改革の傾向と対策(その2)

前回書いたように、現中1(浪人すれば、今の中2より上の受験生も対象になる)が大学を受験するときから、大学入試は大きく変わる。

センター試験の代わりといえる「大学入試希望者学力評価テスト(仮称)」について、前回、素点ではない段階別評価、「合教科・科目型」「総合型」の問題の導入、一部記述式の導入ということになるという話をした。

素点ではない段階別評価というのは、要するに、現行の1点を争う入学試験に対する批判から採用されることになったものだ。

要するに、95点、72点という点数でつける代わりに、A、Bという段階で評価されることになる。

アメリカのGPAといわれる評価や日本でもロースクールなどを受験する際には、大学の成績で、優が4点、良が3点、可が2点でその平均点を行きたい学校に提出することになるが、100点をとって優になった人も、90点で優になった人も同じ扱いである。

ただし、これは内申のようなものについてであり、アメリカのセンター試験にあたるSATや英語力を評価するTOEFLでは、一点刻みの評価を行っている。

受験対策としては、Aランクに達したら、満点を目指すより、ほかの科目の勉強をしたほうが賢いということになる。というのは、この手の評価基準が採用されたら、医学部受験生は、主要5教科ではすべてAが求められることを覚悟しないといけないからだ。

飛びぬけてできる科目を作って、それによって合格というモデルではなく、できない科目を作らないというのが、新センター対策の基本ということになる。

私自身は、こんな試験が採用されたら、ミスに対する受験生の意識が甘くなるし、ミスをしないようなトレーニングもおろそかになると危惧している。

日本製品は故障が少ないのが取り柄であったし、また日本の医者というのは、手術ミスを減らしても、それによって給料があまり増えない(手術の成功率が高い医師ならアメリカなら大金持ちになれる)上、あまり出世に直結しない(少なくとも大学では、論文の数が多い人のほうが手術ミスの少ない人より教授になりやすい)、さらに手術ミスをしても海外ほどは訴えられない。

通常なら、海外より医療ミスが増えて仕方のないシステムなのに、ミスは比較的少ない。これは、受験生のときのトレーニングの影響が大きいと考えている。

それなのに、アメリカでもやらない「改革」を日本でやるのは、きわめて危険と考えるが、受験である以上、割り切るしかない。

要するに、細かい点を気にしたり、満点を狙うより、とにかく、できない科目を作らないのが新制度入試の基本戦術である。

プロフィール
和田秀樹

和田秀樹

1960年生まれ。東京大学医学部卒業後、現在国際医療福祉大学院教授を含め川崎幸病院精神科顧問や一橋大学経済学部非常勤講師、和田秀樹こころと体のクリニック院長など幅広く活躍中。

書籍では「受験は要領」がベストセラーとなり、医学部合格セミナーを全国で展開し「和田メソッド」を提唱、医学部受験の神様と呼ばれている。また、自身では和田塾緑鐡舎塾長も務め毎年無名校から多くの合格者を輩出している。

目次(※随時更新中)
  1. 第1章.過去問を有効に活用する
  2. 第2章.過去問を使って、どの科目に重点をおくかを考える
  3. 第3章.過去問を使って、その学校に的を絞った対策を行う
  4. 第4章.過去問を使って、志望校を決める
  5. 第5章.医学部受験の共通学力とは
  6. 第6章.医学部受験のための絶対基礎学力とは
  7. 第7章.絶対基礎学力としての読解力
  8. 第8章.意外にわからない絶対基礎学力の不足
  9. 第9章.受験直前に伸びる受験学力
  10. 第10章.本番戦術が合否を決める
  11. 第11章.信じるものが救われる本番に向かう精神力
  12. 第12章.意外に難しいケアレスミス対策
  13. 第13章.ミスらん力で合格を勝ち取る
  14. 第14章.センター本番で最善の力を出すには
  15. 第15章.センター本番で最善の力を出すには(その2)
  16. 第16章.センター試験が終わった時点で、本格的な受験生になる
  17. 第17章.個別性に注目して、最後の逆転にかける
  18. 第18章.過去問の最終利用法(※編集中)
  19. 第19章.受験当日の生活術
  20. 第20章.受験のスタート術
  21. 第21章.受験生と高校生の違いとは?
  22. 第22章.記憶力をどう高めるか?(※編集中)
  23. 第23章.ベストの睡眠時間は?
  24. 第24章.食事の意味
  25. 第25章.時間の家計簿をつける
  26. 第26章.休息の意味
  27. 第27章.和田式受験勉強法とは
  28. 第28章.まず志望校を選ぶ
  29. 第29章.志望校の選び方
  30. 第30章.私立専願という選択肢
  31. 第31章.スタートレベルを知る
  32. 第32章.現実的な受験計画を立てる
  33. 第33章.受験計画が具体的なものにならない人のために
  34. 第34章.一日、一週間、一カ月の計画をどう立てるか?
  35. 第35章.受験勉強の暗記と思考のバランス
  36. 第36章.和田式暗記数学とは
  37. 第37章.和田式暗記数学とは(その2)
  38. 第38章.和田式医学部受験英語攻略法
  39. 第39章.医学部受験対策にこそ和田式受験英語勉強法
  40. 第40章.医学部受験と英作文
  41. 第41章.自由英作文という難敵
  42. 第42章.医学部国語対策の基本戦術
  43. 第43章.医学部理科対策の基本戦術
  44. 第44章.過去問から逆算する医学部理科対策
  45. 第45章.単科の医学部は、とくに過去問対策が重要
  46. 第46章.単科の医学部の生物対策
  47. 第47章.医学部入試面接は落とすためのもの
  48. 第48章.どんな受験生が面接で落とされるのか?
  49. 第49章.医学への興味や関心を示す
  50. 第50章.医学小論文対策の基本
  51. 第51章.小論文そのものの対策の基本
  52. 第52章.小論文の最大のトレーニングは添削
  53. 第53章.模試をどう利用するか
  54. 第54章.模試によって次回以降の戦術を立てる
  55. 第55章.模試の成績を気にしすぎない
  56. 第56章.最高の模試は、自分の志望校の入試問題だ
  57. 第57章.あと何点取れれば受かるという発想をもつ
  58. 第58章.改めて志望校を決める
  59. 第59章.主要科目の見切り時
  60. 第60章.浪人のための得点術
  61. 第61章.朝の5分の計算の意味
  62. 第62章.直前期に脳の働きを高める
  63. 第63章.直前期に思い切り勉強する
  64. 第64章.直前期の生活術
  65. 第65章.直前期の休み方
  66. 第66章.センター直前はシミュレーションが明暗をきめる
  67. 第67章.ミスの事前対策を行う
  68. 第68章.これからが本格的な受験生になる
  69. 第69章.高2生もこれからが本格的な受験生になる
  70. 第70章.受験直前でもまだ伸びる
  71. 第71章.受験本番に強くなる法(その1)
  72. 第72章.受験本番に強くなる法(その2)
  73. 第73章.受験本番が終わったら
  74. 第74章.受験がうまくいかなかったら
  75. 第75章.2020年入試改革の傾向と対策(その1)
  76. 第76章.2020年入試改革の傾向と対策(その2)
  77. 第77章.2020年入試改革の傾向と対策(その3)
  78. 第78章.2020年入試改革の傾向と対策(その4)